前の記事で書いた疑問の,自分なりに考えた内容です。味気ない論文調で失礼。識者のご教示をおねがいします。(数式はスマートフォン・タブレット版では見えません。「PC用のサイトをみる」などのオプションを選択してください。)
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まず,古典場を考える。本稿では特に断らない限り,記号は習慣的な意味をもつ(
A_{\mu}:4元ポテンシャルなど)。また,単位系は適当にとって,
4\pi cやら
\mu_{0}やらがでてこないようにしてある。詳しい計算はいちばん下にある参考文献をみてください。
以下ではローレンツゲージ
\partial_{\mu}A^{\mu}=0を使う。電磁場の作用
I は
\begin{align*}
I & =\int d^{4}x\,\left(-\frac{1}{4}F_{\mu\nu}F^{\mu\nu}+A_{\mu}J^{\mu}\right)\nonumber \\
\, & =\int d^{4}x\,\left(-\frac{1}{2}\partial_{\mu}A_{\nu}\partial^{\mu}A^{\nu}+\frac{1}{2}\partial_{\mu}A_{\nu}\partial^{\nu}A^{\mu}+A_{\mu}J^{\mu}\right)\,,
\end{align*}
で与えられる。部分積分により
\int d^{4}x\:\partial_{\mu}A_{\nu}\partial^{\nu}A^{\mu}=\int d^{4}x\:(\partial_{\mu}A^{\mu})^{2}となるが,これはローレンツゲージの条件からゼロとなるので,ラグランジアン
Lは
\begin{equation}
L=\int d^{3}x\,\left(-\frac{1}{2}\partial_{\mu}A^{\nu}\partial^{\mu}A^{\nu}+A_{\mu}J^{\mu}\right)\,,\label{eq:lagrange}
\end{equation}
と書ける。
ここで,この手の計算でよくやるように偏極単位ベクトル
\epsilon_{\lambda}^{\mu}(\mathbf{k})を導入する。添字
\lambda=1,2は波数ベクトル
\mathbf{k}に対して「横方向」を
\lambda=3は「縦方向」を意味し,
\lambda=0は時間方向である。これを使って4元ポテンシャル
A_{\mu}および電流
J^{\mu}を以下のように展開する。
\begin{align*}
A_{\mu}(t,\mathbf{x}) & =\int\frac{dk^{3}}{(2\pi)^{3}}\sum_{\lambda=0}^{3}\epsilon_{\mu\lambda}(\mathbf{k})c_{\lambda}(t;\mathbf{k})e^{ic\mathbf{k}\mathbf{x}}\,,\\
J^{\mu}(t,\mathbf{x}) & =\int\frac{dk^{3}}{(2\pi)^{3}}\sum_{\lambda=0}^{3}\epsilon_{\lambda}^{\mu}(\mathbf{k})\chi_{\lambda}(t;\mathbf{k})e^{ic\mathbf{k}\mathbf{x}}\,.
\end{align*}
この展開では,普通やるように生成消滅演算子をつかわずに,ナマのフーリエ成分
c_{\lambda}(t;\mathbf{k})を使い,時間
tへの依存は変換せずにそのままにしてある。この変換をもとに(
\ref{eq:lagrange})のラグランジアンからハミルトニアンを計算すると
H=\frac{1}{2}\sum_{\mathbf{k}}\left[-\left(\dot{c}_{0}^{2}+k^{2}c_{0}^{2}-2c_{0}\chi_{0}\right)+\sum_{i=1}^{3}\left(\dot{c}_{i}^{2}+k^{2}c_{i}^{2}-2c_{i}\chi_{i}\right)\right]\,,
となる。ただし,
\partial c_{\mu}/\partial t=\dot{c}_{\mu}と書いた。
以下では,ソースタームが時間によらないとしよう(
\dot{\chi}=0)。 新しい変数
\xi_i=c_i-\chi_i/k^{2}を導入すると,横成分(
i=1,2)に対応するハミルトニアンは以下のように書ける。
H_{i}=\frac{1}{2}\sum_{\mathbf{k}}\left(\dot{\xi}^{2}_{i}+k^{2}\xi_{i}^{2}+\frac{\chi_i^{2}}{k^{2}}\right)\,.
括弧のなかの第3項は,定常電流がつくる,いわゆる「near field」の寄与で時間依存はない。この項が磁場成分しかもたないことは,直接計算から示すことができ,双極子磁場などの定常時場がこれに相当することがわかる。このハミルトニアンから,力学変数
\xi_iは
c_iのゼロ点を
\chi_i/k^{2}だけ移動した調和振動子であることがわかる。
ここまでの話は古典場であったが,これを交換関係
[\dot{\xi_i},\xi_i]=i(これは
[\dot{c_i},c_i]=iと等価である)を使って量子化しよう。量子化の標準的手順によって,生成消滅演算子
\hat{a}_i^{(\pm)}=(2k)^{-1}(\dot{\xi_i}\pm i|\mathbf{k}|\xi_i)を導入すると,モード
kの粒子が
n_k個ある状態
\left|n_{k}\right\rangle の横成分のエネルギーは
\hat{H}_{i}\left|n_{k}\right\rangle =\left[\omega\left(n_{k}+\frac{1}{2}\right)+\frac{\chi_i^{2}}{2 k^{2}}\right]\left|n_{k}\right\rangle \,,
と計算できる(
\omega=|\mathbf{k}|と書いた)。
これから,横成分の電磁場のエネルギーは
\omega(n_{k}+\frac{1}{2})と
\chi_i^{2}/2 k^{2}の2つの部分からなることがわかる。はじめの部分は光子で,これは間隔
\omegaの離散的な値をとる。この値が光子の数と比例すると解釈して一個,二個と数えることができるとするのが「量子」つまり量子化による粒子像である。二番目の部分は磁場のみからなる「near field」の寄与で,これは電流の値が連続的であれば連続的な値をとる。そういう意味でこの部分は「量子」ではない。
(しかし,上式のように分解するのは,数学計算上の便法的な部分がある気もする。物理的実体としては遅延ポテンシャルみたいなものが適当だと思うが,その場合は光子の概念はどうなるのだろう?)
参考文献
・
量子場の理論入門(「
いろぶつ」こと
琉球大学前野さんの講義録)
・
電磁場の量子化(「
物理のページ」から)