2014年7月7日月曜日

変分法でオイラー・ラグランジュ方程式を出すときに端点の条件は必要か?

また更新が滞ってしまった,ひさびさに書きます。先日,解析力学の計算をしていて,ちょっと疑問なことがあって,twitterに書いてみると,あっというまにその筋の碩学からコメントがたくさんついて,ナカムラが席をはずしている間にあっさり解決してしまったということがあった。で,せっかくだからとtogetterにまとめたら,これにもさらにコメントをもらったりして,なんというか便利な世の中になったものよのう,と思ったわけである。そのうちSNSを介した共同研究とかいうのが普通になったりするんじゃなかろうか。

で,その内容だが「変分法でオイラー・ラグランジュ方程式を出すときに端点の条件は必要か?」(togetterへのリンク)というもので,たいてい(ナカムラがみた範囲ではすべて)の力学の教科書に書いてある,とある方程式を導出するときに使う条件が,実はなくてもいいのではないか,という疑問であった。碩学の意見の一致するところによれば,この条件は全体の理論構築には重要なのではあるが,その方程式の導出という部分では確かに必要ない,ということである。うーん,学生のころになんの疑問もなく受け入れていた話でも,よく考えてみればこういうことにも気がつくのであるなあ,大人になるとはこういうことかと感慨にひたった次第である。

そして,さらに驚いたのは,このtogetterが結構多くの人に読まれているということである。今日(7月7日,七夕だ!関係ないけど)見たら3630viewもされている。びっくり。いや,たとえば相対性理論だとかブラックホールだとかの“人気アイテム”だといろんな人が興味をもってくれそうだが,解析力学などという地味な話題でもそれなりに読んでもらえるものだなあ,と思った。


それとは別にいつもあるよなあと思ったのは,この経緯をtwitterなどで見た物理とは関係ない友人何人かから「なに言ってるかさっぱりわからん」という感想をもらったことである。これは,昔から物理関係の仕事内容を同業者以外にみられたときにくる定番の反応で,物理や数学で食っているひとのほとんどは経験したことがあるのではなかろうか? しかし,考えてみると不思議なことで,たとえば音楽の経験のない者がプロのピアニストにむかって「わたしにはさっぱり弾けません」とは普通言わないだろう。

つまり,その道のプロがかなりの努力と年数をかさねて獲得した商売上の技について,普通なら素人がそれをできるかどうかなど考えないのだが,物理とか数学(ほかの学問でもあるのかな?)に関しては「さっぱりわからん」と言ってしまうわけである。こちとら長年の修行でやっと身につけたワザなんだから,簡単にわかってもらったら困るんだが,といつも思う。いや,別に不愉快に思っているわけじゃないのですが,どういう心理からそのような反応になるのか考えると面白い。たとえば医者の手術とか,棋士の将棋とか,いろいろなプロの技に対して内容によってリアクションの性質が違うとすれば,なぜなのか考えるのはなかなか興味深い話ではある。

ということで,もとのtwiter上での議論にもどるが,この問題に気がついたのは変分法で停留値を求めるプロセスを多変数に拡張したらどうなるか,ということを考えていたからである。変分法を汎関数微分で書くと,ある点での変分はデルタ関数を含むようになるので,境界の値は関係なくなるのではなかろうか,と思った次第である。うーん,さっぱりわからん。

*)この多変数の変分法に関してメモを書いたので,興味のある方は読んでコメントをいただければ嬉しいです。togetterの内容とは直接関係はありません。間違いなどあったらご教示のほどを。

2 件のコメント:

  1. すいません、メモの4つめの式の前ですが、p=(δS/δ(\dot q))となってますが、p=(δS/δq)ではないのですね??(つまりpと書いてあるけどいわゆる運動量とはまた別の量でしょうか??)

    その後の式のGの被積分関数の第1項も、p(∂L/∂(\dot q))となってますが、これもハミルトニアンでおなじみのp \dot qまたは(∂L/∂(\dot q))\dot qとは別なんでしょうか。

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  2. この質問に関して真に驚くべき解答をみつけたが,このコメント欄はそれを書くには狭すぎる…。ということで,LaTeX組版したhtmlを用意します。しばしお待ちを(それほど大したことないので期待しないで。)

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