2011年2月24日木曜日

月も火星もはるかに超えて(1)。

少しまえになるが,日本人宇宙飛行士の若田さんが,国際宇宙ステーション(以下ISSと略)の船長になるというニュースがあった。英語の「commander」を多くの日本メディアは「船長」と訳していたが,「ステーション」の長だったら「駅長」ではなかろうか,というボケは別として,めでたいニュースには違いない。しかし,宇宙科学の研究者の多くと同様,ナカムラはこういうニュースを見ると釈然としないものがある。理由は簡単,宇宙ステーションは投入したコストのわりに,あまりにしょぼい成果しかあげてないからだ。

くわしいことは,以前にラジオでしゃべったことがあるので,お暇なかたはそれを聞いていただくか,あるいは宇宙ジャーナリストの松浦氏の解説を読んでいただくとして,端的にいうと,ISSに限らず宇宙ステーションという枠組みは科学・技術の研究には極めて効率的が悪い,ということだ。ISSのニュースといえば,日本人クルーが琴の演奏をしましたとか,紙飛行機を飛ばしましたとかいう「ほのぼのニュース」ばっかりで,こんな大発見がありましたとか,すばらしい素材の製法がわかりましたとかいうのは聞いたことがないでしょう? やってる実験の中には,たとえばこんなものもあって,これがわざわざ何千億円もかけた実験施設でやるべきことだろうか?

まあ,これにはいろいろと政治的バックグラウンドなどがあって,ネットで検索するといろいろと内情がわかってくるわけだが,われわれ研究者にとっていちばん困るのは,ただでさえ少ない宇宙開発予算がほぼ無駄(と言ってよいと思う)に使われるということである。

ただ,こういう考えは科学至上主義という批判もある。たとえば,南極点やエベレスト頂上に人類が立つというのは,とくに科学的知識や実際の利益をもたらすものではないが, 人類のフロンティアへの挑戦として意味があるというのである。ナカムラは登山もやるので,基本的にはこの考えには賛同できるが,しかし,現在の国際宇宙ステーションがフロンティアかといういと,はなはだ疑問である。

ニュースなどでISSにいる宇宙飛行士の映像を見ると,いかにも遠い宇宙空間という感じがするが,実はISSが飛んでいるのは地表から上空400kmほどのところである。これは東京-福井間よりちょっと遠い,というくらいの距離でしかない。「え,福井ってどこ?」だって? すみません,ナカムラの住んでる福井は島根などと知名度最低を争う県なもので(福島と間違えんなよ)。まあ,東京-大阪間くらいと思ってください。地球の直径が1万3000kmであることを考えると,自分のうちの玄関先くらいの場所と思ってよかろう。しかも,そのあたりの宇宙空間に(ちょっと低いけど)人類がはじめて行ったのは1961年のガガーリンなわけで,もう半世紀も前の話だ。

ということで,ISSはやっぱりイマイチ,という話になるわけだが,では,フロンティアとしてもっと遠い宇宙に行くというのはどうだろうか?というのが次回の話題になります。などといいながら,前書いた掛け算の話題も「次回」をまだ書いてないわけだが,気長にまっていてください。


追記
つづき書きました。

3 件のコメント:

  1. 宇宙にとびだすしゅぴーげるー、-、

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  2. やっぱり,この年代は反応するなあ。

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  3. しゅぴーげる、しゅぴーげる、しゅぴーげる〜〜〜

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